旬の特集
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文書作成日:2017/05/25

 昨年の秋から今年3月まで、首相官邸で「働き方改革実現会議」が開催されました。この会議は、「働き方改革」として、長時間労働の是正、同一労働同一賃金の実現、最低賃金の引上げ、高齢者への就労機会の提供等の課題を解決するための議論を行い、具体的な実行計画を作り上げるために開催されたものです。平成29年3月28日には、その議論のまとめとなる「働き方改革実行計画」(以下、「実行計画」という)が政府から示され、それに基づき厚生労働省の労働政策審議会等での議論が開始されています。実行計画は本文と工程表で60ページを超える分量となっており、多くの計画が盛り込まれていますが、今回は、その中でも企業にとって大きな影響が出てくると思われるもの、早めの検討が必要なものを確認しておきましょう。


 働き方改革の実現として挙げられた検討テーマは以下の9項目となっており、かなり広い分野での議論が行われてきました。

(1)非正規雇用の処遇改善
(2)賃金引上げと労働生産性向上
(3)長時間労働の是正
(4)柔軟な働き方がしやすい環境整備
(5)病気の治療、子育て・介護等と仕事の両立、障害者就労の推進
(6)外国人材の受入れ
(7)女性・若者が活躍しやすい環境整備
(8)雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の充実
(9)高齢者の就業促進

 そして、実行計画では、対応策として19項目に分けられ、それぞれに工程表が作成されています。その中でも特に今後の動向に注目しておきたいものが、以下の5項目になります。

(1)同一労働同一賃金の実効性を確保する法制度とガイドラインの整備
(2)法改正による時間外労働の上限規制の導入
(3)勤務間インターバル制度導入に向けた環境整備
(4)副業・兼業の推進に向けたガイドライン策定やモデル就業規則改定などの環境整備
(5)継続雇用延長・定年延長の支援と高齢者のマッチング支援


 それでは、1.で注目すべき点として挙げた5項目について個別に確認をしておきましょう。

(1) 同一労働同一賃金の実効性を確保する法制度とガイドラインの整備
 パートタイマーや契約社員等の非正労働者は、全雇用者の4割を占めるまでになり、その結果、以前は補助的な業務を担っていた非正規労働者の一部は、正社員と同様の業務を担うようになってきました。ただし、賃金をはじめとした処遇の格差があり、その格差が不合理であれば、解消すべきであるという考えになっています。このような背景から、同一労働同一賃金の実現が目指されています。

 この同一労働同一賃金については、昨年12月に「同一労働同一賃金ガイドライン案」が政府から公開され、今後、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法が改正される予定になっています。これらの改正では、@労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備、A労働者に対する待遇に関する説明の義務化、B行政による裁判外紛争解決手続の整備、C派遣労働者に関する法整備、の4点が実施される見込みです。

(2)法改正による時間外労働の上限規制の導入
 長時間労働による健康障害の問題は以前からかなり問題視されてきましたが、大手広告代理店の新入社員が過労自殺したことで、問題意識がさらに高まりました。特にこの事件では、時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)を超える時間外労働があったこと、そして、それが適正に扱われなかったことが問題となりました。そこで、働き方改革では36協定で定める時間外労働の限度時間について、企業にとって厳しい内容が求められる方向となっています。
 
 その内容は、現行の厚生労働大臣の告示となっている時間外労働の限度時間を労働基準法に格上げし、さらには罰則をつけることで強制力を持たせること、臨時的な特別の事情がある場合に、この時間外労働の限度時間を超えることができるという特別条項の上限等を新たに設けることとなっています。特別条項の上限については、1年720時間とした上で、さらに特別の理由がある場合には、以下の範囲で時間外の延長を認めるとしています。

a. 2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月の平均で、いずれにおいても、休日労働を含んで、80時間以内を満たさなければならないとする。
b. 単月では、休日労働を含んで100時間未満を満たさなければならないとする。
c. 加えて、時間外労働の限度の原則は、月45時間、かつ、年360時間であることに鑑み、これを上回る特例の適用は、年半分を上回らないよう、年6回を上限とする。

 このルールが適用された際には、特別条項を適用する企業では、労働時間の管理がかなり複雑になることが想定されます。なお、この上限規制に関しては、自動車の運転業務、建設事業、医師および新技術・新商品等の研究開発の業務を例外の業務として、一定期間の適用を猶予したり、健康確保措置などの導入により適用除外として取扱われる予定です。

(3)勤務間インターバル制度導入に向けた環境整備
 長時間労働対策は(2)で挙げた時間外労働の上限規制が直接的な対応となりますが、もうひとつ、「勤務間インターバル」が注目されています。勤務間インターバルとは、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息時間を設けるというもので、しっかりと睡眠時間を確保することが目的とされています。今後、努力義務ではありますが、労働時間等の設定の改善に関する特別措置法に盛り込まれる予定です。

 なお、平成29年度からは、新しく「職場意識改善助成金(勤務間インターバル導入コース)」が導入され、一方で、厚生労働省のホームページで就業規則の記載例や、導入事例のリーフレットも公開が始まっていることもあり、今後、導入する企業が増えると思われます。

(4)副業・兼業の推進に向けたガイドライン策定やモデル就業規則改定などの環境整備
 現状、副業・兼業については、情報漏えいのリスクや長時間労働になることで本業に専念できなくなるといった理由から、認めていない企業が大多数を占めます。しかし、副業・兼業を希望する労働者は増加しており、また人手不足を解消する目的からも、政府ではそれを支援する動きをみせています。

 実行計画では、長時間労働を招かないよう、労働者が自ら確認するためのツールの雛形や、企業が副業・兼業者の労働時間や健康をどのように管理すべきかを盛り込んだガイドラインを作ることとしています。また、厚生労働省から公開されているモデル就業規則について兼業を認める方向で改定することにより普及を目指すとしています。

 副業・兼業を規制する法律はないため、すぐにでも認めることは可能ですが、今後、社会保険制度、労働時間・健康管理の方法についても検討が進められる予定になっています。これらの動きにも注目していきましょう。

(5)継続雇用延長・定年延長の支援と高齢者のマッチング支援
 公的年金の受給開始年齢が引上げられるとともに、企業の雇用継続義務も引上げられてきましたが、労働力人口の減少もあいまって、今後、高齢者の活用がさらに求められる時代になっています。特に高齢者の7割近くが65歳を超えても働きたいと願っているという調査結果を受け、意欲のある高齢者が年齢に関わりなく働くための就業機会の確保が必要とされています。

 そのため、実行計画では65歳以降の継続雇用延長や65歳までの定年延長を行う企業への支援の充実を掲げており、実際に、助成金も拡充されました。また、2020年度までを集中取組期間と位置づけ、助成措置の強化とともに、継続雇用延長や定年延長の手法を紹介するマニュアルや好事例集を通じ、企業への働きかけや相談・援助を行っていくとしています。そして、その後、継続雇用年齢等の引上げに係る制度の在り方を再検討するとしています。

 今後、雇用保険の高年齢雇用継続給付についても見直しが行われることが想定され、どのような労働条件で高齢者を雇用していくのかが課題になるでしょう。また現場も含め、高齢者の活用を考えていくことが求められます。

 これらの他にも、最低賃金の引上げについては、年率3%を目途とし、全国加重平均が1,000円になることを目指すといった内容が盛り込まれています。まずは、ここで挙げた5項目を中心として、どのように対応をしていくのか、現状分析から始めていきましょう。

■参考リンク
首相官邸「一億総活躍社会の実現」

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。



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